「バベットの晩餐会」DVDを借りてみた。学生のとき観て以来で、内容はほとんど覚えてないのだが、最後にバベットが、大仕事を終えて、厨房にどっかりと腰を下ろして呆然としているシーンだけをなぜか妙に鮮明におぼえていた。約二十年ぶりに再見して、思ってたほど面白くもなかったというか、寓話風な、おとぎ話風なところが、微妙に物足りないような感じで、しかしクライマックスの晩餐会のシーンはやはり見応えがある。最初から最後まで出てくる料理がちゃんとわかるし、登場人物たちが皆、寡黙さで敬虔さと慎みを保とうとしながらも、次第に料理と酒に陶酔し始める経過をみていると、この飲食という行為の人々にもたらす、如何にもな感情の温まりというか、心の中のばらばらだった一つ一つがゆったりとなめらかに滑り合っていって、頭の中の考えが動くときの、色々なことが連鎖するときの感触のようなものを思い出すようで、それがまあ、ある意味、普通に他所の人たちが美味そうな忘年会やってるのをみているような感じというか、単に酒でふわっといい気分になった人々が楽しそうというだけだが、それでもそれで自分が、今まさに酒を飲んでるかのようにして、その感触を思い出し、でもやはり慈愛とか寛容の心というのは、そんな宴会の席でおいしいものを食べたときに一時的にでも生じるような、根底に自分で自分を無条件に許し肯定する何か、酒の酔いがもたらす根拠なき楽天性のようなもの無くしては生じないのではないかという風なことを思い、おいしいものを食べることで、たとえば自分への戒めや過去の記憶へ固執する部分のタガが緩むということもそうだし、何となく予感のような心配事の消えていく感じ、これから楽しいことが待っていそうな感じの期待感を増幅させてくれもして、結局はごはん食べる事でしか、考える生き物として生きるのも考えるのも継続できないのか、という風なことを思う。