ワルキューレ」DVDで観る。見応え充分。一時間五十分のあいだ、ぎっしりと濃密でありながらさくさくと軽快にお話が進んでいって、あれよあれよというまに、一気に強烈な緊張につつまれて、その成り行きを固唾を呑んで見守るしかない。そもそも、この映画を観る人のほとんどが、この話のなかの「作戦」が失敗するということをわかってみている。もし成功してしまったら、その時点でヒトラーが死んでしまい、ナチス政権が滅びてしまうのだから、冒頭で史実に基づいて作られた映画だと断りが入る以上、それはありえないとわかる。つまり、完全にネタバレしている話であるにもかかわらず、つい「これは…もしかすると」と感じてしまい、手に汗握ってしまうというのは、やはり、もの凄くおもしろいということだと思う。というか、面白さに徹していることの凄さであり、シュタウフェンベルク大佐の人間的素晴らしさとかに映画がまったく寄りかかってないのが潔い。「勝てば官軍」のお話で、勝敗の決着がついてない情況を描くのであれば、これしかないのだ。「社長は死んだ。今日から俺の指示に従え。」と他部署の部長から言われたけど、社長室からも今までどおり指示が来ている。いったいどちらの言ってることが本当なのか?すみやかに、どちらかを選ばなければいけない。決断のチャンスは一度だけだ。間違ったら、死んでしまう。すべてがわかっている未来の視点なら簡単にわかることが、今この瞬間には、当然ながらまったくわからない。そんな状況下、色々な人々が色々と判断をするのを眺めていると、ああこうして、生きている時間というものを、のっぺりとした単純なテーブル上での、一瞬の丁半博打に置き換えてしまうことのスリルが、なぜかかえって人間を活き活きとさせてしまうという、それはたしかにそういうものなのか…と思う。最後にクーデター関係者一同処刑されて映画が終わって、はーっ・・・とため息しか出ない。「…なんか、お笑い芸人の出てるテレビが見たい。」「…男はつらいよ、でも見たい。」などという感想が鑑賞後の夫婦間でささやかれた。


ブライアン・シンガーって「ユージュアル・サスペクツ」の人だったのか。勘違いしていた。「L.A.コンフィデンシャル」の人かと思っていた。ぜんぜん違った。


そのあとホン・サンス「よく知りもしないくせに」DVDで観る。こんなのはじめて観た、という感じ。笑うし、ずっと観てしまう。最初は「小津?」と思ったけど、なぜそう思ったのか不明。映画が終わって、「かなり、ばかだね。」「これはちょっと、あんまり観たことないね。」などという感想が鑑賞後の夫婦間でささやかれた。ホン・サンスは今後他の作品も観ていくことになりそうだ。