小学校に入学して、まず最初の日は入学式なので、登校しておそらくすぐに体育館に行ったと思う。生まれてはじめて体育館に入って、その屋内をみて大変驚いた。あれほど巨大な室内空間を見たのははじめてだった。柱が一本もなくて、かまぼこ型の天井がはるか上空にあって、等間隔で照明がぶら下っていて、それら一つ一つの光が強烈に眩しく、室内も真昼の直射日光に照らされているかの如く明るくて、薄い半透明色をした自分自身の影が足元の前にも左右にも後ろにも四方八方に落ちていて、見回すと広大な床が磨かれて艶々とまるで水面のように光っていて、風景全体が逆さまになって映りこんでいて、そのへんに立っている人もみんな足の裏を境界線にして床の下で全員逆さまになっていた。遠くにステージがあって、国旗と校旗が並べて掲げられていて、演台の脇には巨大な松の盆栽が置かれている。ステージにやがて心の優しい校長先生が微笑をたたえながら上ってきて、わかりやすい言葉で入学おめでとうのご挨拶をする。その後で明確に悪人顔の来賓が何人か続けて呼ばれて、子供向けではない挨拶を淡々とする。そのあと校歌斉唱となって、その一回聴いただけで全員が校歌の歌詞とメロディを一番から三番までおぼえてしまう。その後担任紹介となって、自分たちの整列している前に、地味でやけに野暮ったい感じだが性根は悪くなさそうな、まあ、ある程度は信用しても良さそうにも見える女性が満面の笑みで立つ。隣のクラスの前に立ったのは、精悍な顔立ちで背の高い、洋服のようにおのれの筋肉を着ていると自覚しているかのような、存在からいきなり暴力臭が漂ってきそうな男性で、少なくともあの列でなかっただけでも、まだ運が良かったと言える。ああ助かった。あんな担任となんて、絶対に上手くやっていけるわけがない。地味で野暮ったい女で、まだよかったのだと思って、胸をなでおろす。