三菱一号館美術館の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」。印象的だったのはドガ。ルドンの驚くべきシャープな仕上がりの風景画。ウジェーヌ・ブーダンの海辺と船の風景。ヴュイヤールと、ボナール。
ドガは(なんだかんだ言って、同世代の連中なんか、馬一つ描写する力量も無いくせにな…)とかなんとか、作者本人がぼやいているのではないかと思うくらいの、凄まじい技量というか筆力を感じさせる。ウジェーヌ・ブーダンの作品は、以前にも何度か観たことがあるが、今回まとまった点数を観て実に堪能した。(調べたら2011年に乃木坂で、やはりワシントン・ナショナルギャラリー所蔵の今回よりももっと大規模な展覧会がやっていてそれも観ていたのだった。たしかにマネの牡蠣の絵とか犬の絵とか、見覚えあったし。)ただし、ブーダンのどこが良いの?と聞かれても上手く応えられず、うーんなんとなく、と言うしかないのだが、でも逆に、何処も悪いところがないでしょ?ずっと観ていられるでしょ?という感じなので、良いと言うしかない。タッチ一つ一つの大きさ・ボリュームの慎ましさとか、ちまちまとした描写の感じとか、バルールの広げ方とか(バルールなんて言葉を何十年ぶりかで思い出した)、べつに驚くべき部分は何もないけど快適で好ましい要素だけで出来ている。まず、ほとんどの絵に、海・波打ち際・船、が出てくるから、それが単純に気持ち良いというのもある。表現の秀逸さで「空の王者」と呼ばれたらしいが、いや、海でしょ、と言いたい。ヴュイヤールも自分にとっては、このあたりが最良に近いと思えるような作品がいくつも観れたので良かった。