木場のgalleryCOEXIST-TOKYOで井上実展を再度観た。観た、とも言えるし、そのなかに自分を同期させに行った、とも言えた。たぶん、画面であり、描かれていることであり、描かれていないことだった。あったのはおそらく、それらだった。どこまでも、つつましくつつましく、なるべく、何事でもないかのように、それを出来事ですらないかのように、静かにそっと、ことの終わるのを待っているかのようだった。画面内にそれらが、ざわざわ、わさわさとしていながらどこまでも静か、と思いながら、自分が会場をうろついていた。
何日か前から、白目の一部がけっこう鮮やかに赤く充血していて、我ながらグロくて嫌になってくるのだった。おそらく、水泳ばかりなせいだと思う。目は、苦手である。目のことを考えただけで、気持ちが萎える。ましてや今、自分の目がそんな状態だなんて、ほんとうに気落ちする。でもくよくよしてもしょうがないから、あまり考えないようにして一日過ごした。真冬の晴天で、風が強かった。白いシャツの上に黒いニットを着て、青いデニムを履いて、紺色のコートを羽織って、裾や襟元が冷たい風にばたばたとはためいた。そういう自分の姿ぜんたいにおいて、それでも右目だけが赤いことを想像すると、なんだか、モノトーンでまとめられた一枚の絵の、ほんの一部にだけ、わざとらしく鮮やかな挿し色が効いてるみたいな、とても嫌な気分になる。早く治りたい。病院に行こうかとも思うが、目の充血くらいで病院もバカバカしい。ドラッグストアですら、あまり親身になってくれない。いちばん安い目薬を薦められて、それをいそいそと購入して帰る。