観光客


状況がどうであれ、良き時代の観光客のように過ごした。
それは、狙ってできることじゃなくて、運が良いか悪いかだった。
銃殺刑になる囚人が、壁の前に並ばされていた。
なぜ彼らが自分じゃないのか。そこに理由はない。ただの謎だ。
運の良い観光客というのは良いものだ。傍から見ていても活気を感じて心が華やぐ。
ただ他人の旅行を眺めているだけで、おおむね満足できるとも言える。
他人の無益な旅行、その素振りや仕草の、昔ながらの変わらなさを確認したい。それで本を読んでいると。