ベトナム料理の店を調べたら、上野にはそれほどたくさん無いことがわかる。が、そもそもフェルメール展もベトナム料理も、人から誘われたりリクエストされたりしなければ自ら行こうとは思わないのだから良かった。いやベトナム料理は一度くらい食べてみたかった。というかフォーとか生春巻きとかはもちろん食べたことあるけど、ちゃんと自分でレストランに行ってメニュー見て酒も料理も自分で注文して食事するのは、おそらくはじめて。料理も混ざり合いの歴史で、とくにけして平和ではない時代も含む複雑な歴史を経た地域に特有な料理の、ことにアジア圏とヨーロッパ圏の文化混淆というのは、料理や食器や調度品や給仕方法や作法等に至るまで、色々と想像の余地が広がるようなところがあり刺激的である。もちろんここは今の日本なので、その要素も色濃く混ざり合う。いつかは目の前の料理から、今の日本も頭の中で想像してみるくらいの、はるかな時間が流れてしまって、そこに同じ名前の料理が供されているところまで想像する。そのときは現実に我々はもういない。