All the Things You Are


キース・ジャレットの「Standards, Vol.1」から「All the Things You Are」を聴く。二枚組ライブ盤「Tribute」に収録されている同曲も聴く。この人のアップテンポでぐいぐいとグルーブさせてノリノリで弾きまくる系の曲の、このあたりは代表だと思うが、僕は最初これ、意味がわからなかった。アドリブの旋律がコードをあまりにも逸脱して外れていってしまうようで、ここまでイッてしまうともう収拾ついてないに等しくないか、などと当初は思いもした。しかしなにしろドラムとベースが筆舌に尽くしがたい鉄壁のリズムパワーで、デカイ音で聴くとこの物凄さにだけは、はじめから興奮させられて、もうほとんどそれだけというか、鋼鉄のリズムの上でドロドロ、テロテロになった液体が飛び跳ねてるみたいな印象に感じていた。それにしても今更こうして聴きなおしていると、ほんとうに良い音質で聴けるようになったものだなあと感慨深い。単にiPhoneのプレーヤーに安いイヤホンで聴いてるだけだけれども、それでも二十五年ほど前と較べたら、各音がとんでもなくちゃんと聴こえる。そして何度聴いても目くるめいて気を失いそうになるほどの緊張感と興奮に満ちた歓喜に包まれる。夜桜を見上げながらの帰り道に、大音量で聴いている。