レストランで近くの客の会話をつい聞いてしまうことがある。とくに自分が一人客のときは、聞きたくなくても聞こえてしまう。そういう他人の話を聞いているのはすごく面白いわけではないが、つまらなくもない。いや、ときにはつまらないこともある。そういうときは聞かないようにしたいが、それでも聴こえてしまうので、仕方がないので聞く。聞いているうちに、つまらなさが次第に緩和されていくこともある。もちろん彼らのことを知らないし、僕とは何の関係もないのだが、そのまま、しばらく時間を経る。聞きながら、考え事をしながら、なんとなく過ぎる、やがてその時間を経て、ふととき、なぜか自分が、じつは単に黙って聞き役に徹しているだけの、実はそのテーブル客の一員だったんじゃないかと感じるときがある。