EDEN


新宿シネマカリテで「EDEN」観る。淡々と、二十年。一九九ニ年からはじまって、ニ○一三年まで描いてしまうところがすごい。というか、この主人公と僕はだいたい同い年で、もちろん僕はこの主人公の生き方とほぼ何の共通性も無いのだが、それでもさすがに、この時間の流れ方がもう、なんとも恐ろしいような複雑な気分で見るしかない。


とはいえ描写には抑制が効いており、いわゆる感情・共感主導の作品ではなく、観ていることの高揚とか興奮も、音楽映画であるにも関わらず音楽を聴く楽しさも、ほとんどないと言って良いかもしれない。いや、さすがにそれは言い過ぎで、あの曲やこの曲や、ハウス好きやガラージュ好きなら嬉しくなるような曲がいっぱい掛かるのだけれども、それでもそれはあくまでも背景色という位置付けで、少なくとも上映中はずっと音楽を聴いて楽しもうよ、という映画ではなかった。


なんというか、年取るっていうことの凡庸さというか、諸々のつまらなさというか、まあはっきり言って、この映画は、全体的にはさほど面白くないとうのは間違いないのだけれども、その淡々とした手つきで、クソ凡庸な、面白くなさの、そのありふれた、どうしようもなく紋切り型なかたちにまとめて落としていく意志というか、これをそのように記録し、定着させなければならないという、映画そのものをそのようにまとめようとして、それを実践した意志に対しては、強く共感するし、尊敬に値すると思う。こういう意志をもって撮られた映画というのは見応えがあるし、地味だが、とても大事にしたい作品。


しかし二十年なんて、一瞬の夢みたいなものだな。というかたぶん、二十年なんて大した時間ではないのではないだろうか。おそろしいことだ。これを観て、じつは、誰もがそれを「こんなの、大した時間ではないんじゃないの?」と思うのでは?今から、いまさらのように追加注文で、少なくとも、もう十五年くらいオーダーしちゃったとしても、べつに何とかなるのでは…?