TOHOシネマシャンテでタランティーノ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観る。タランティーノ作品を観るのはすごく久しぶり。映画がはじまってしばらくして、物語の流れが何とも妙なリズム感で、思わせぶりというのでもなく、無意味な投げやりさというわけでもなく、不思議な間延び感というか、つながりのデコボコした違和感が、こういう感じこそが、タランティーノだったかなあ…と思う。しかしブラッド・ピットという俳優はほんとうに掛け値なしにカッコいい。もう、どうしようもなくタフで男臭くて、ニヤっと笑ってサングラスを取るみたいな古典的カッコよさではあるが、そういうものとして完璧である。レオナルド・ディカプリオは三枚目の役で、ほぼ全編スベッてるような気もするが、かえってそこが面白いのか。音楽や車や馬や時代っぽい細部はよくできていて楽しいけど、どの場面もエピソードも、良くも悪くもなくて、これはまさに、暇つぶしで観るのにふさわしい映画だ、というとディスってるようだが、けしてそうではなくて、面白いわけじゃないのがかえってありがたい、みたいな気分が続く。タランティーノ作品にしては悪ふざけの度合いが少なくて比較的落ち着いてられるのもいい…などと思っていたら、これは終盤で盛大に大騒ぎがはじまって心底げんなりすることになった…。往年の名作ホラー風のしょうもない感じに悪フザケして、シャロン・テート事件ネタで引っ張って最後ああいうオチか、ということで終わって、なんだか最初から最後までぜんぜんつながってない感じだったけど、まあいいのか…みたいな、文句ばかり言ってるようだが、けっこう楽しんだ。二時間半以上の長さでウンザリもしたが、それでも映画というのは不思議なもので、「あー早く終わってほしい」という気持ちと「あーもっと観たいいつまでも観たい」という気持ちがふつうに共存してしまう。映画は、観るのはしんどいのだが、一本観ると続けて二本三本と観たくなる、そんな感じだった。