This Is It

夕食後、なんとなくテレビをつけたら、マイケル・ジャクソンThis Is Itが放映されていて思わず見入ってしまった。ステージでダンサーたちとリハーサルするマイケル・ジャクソンの服装が何種類かあって、別日の撮影をつなぎ合わせているのだろうが、そのうちのグレーのジャケットに黒っぽいスラックスに、赤いシャツの開襟が大きく張り出している服装、全体的にはものすごく地味っぽいのにキレイなシルエットでいい感じだ。あんなシャツ、自分に着ることはできないわけだが、…でも、もうちょっとだけ地味目な原色のシャツを選べば、今あるグレーのジャケットに合わせてみたらどうだろう!意外に、いいんじゃないの?…などと一瞬想像してしまったのだが、そういう慣れないことはやめた方がいいと瞬時に正気を取り戻す。まあ一瞬だけでも、観る者をそんな身の程知らずな考えに引き込んでしまうくらいには、マイケル・ジャクソンという人はカッコいいわけだ。顔は怖いけど。それにしてもあれだけの運動量なのにものすごく痩せていて、あの細身のどこに持久力が隠されているのか不思議に思う。そしてそのステージングは、どこまで行っても熱量が変わらないというか、波が細かいというか、感情の抑揚がきわめて少ない、舞踏というものがそもそも、そういうフォーマットなのかもしれないが、本来はダンサーに個性など必要ではないというかのような、まったくの非自己表現、非人間的というか人の所作からいかに距離を置くかに賭けているかのような、だからこそ自身の仕草、ふるまい、型、すべてを完全に掌握して百パーセントに近いセルフコントロールを実践しようとするかのような、それこそふと能の世界が見えてしまうかのようなところもある気がした。