古葉

昔のスーツはサイズがでかかった。ヤクザ映画やチンピラ映画に出てくる人物の大ぶりなジャケット。実際の肩幅よりはるか大きくパッドが張り出していて、そこから重力にしたがってすとーんと垂直線の強調されるシルエットを為す、深々とタックの入ったスラックスもゆったりと腰周りを覆っており、分厚いベルトがシャツの裾とスラックスの広がりを同時にぎゅっと束ねている。その上下で座布団に胡坐をかいて座るとき、着ているものはまるで中国やアジア諸国の民族衣装のようにゆったりとしたドレープを描いて床に広がる。服装は時代で平然と変わるので何がおかしくて何がまともか、まるでわからないけど、昔のスーツがでかかったのはたしかで、今よりはよほど、畳や襖との相性が良かった。

月下の棋士」の登場人物の古葉健の、確認したかったのは、この顔。(この、たったひとコマだけのために、kindleで買ってしまった…。)

 

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