マスヒステリズム

帰宅途中の夜道で、シャッフル再生中のイヤホンから突如として高柳昌行の「マスヒステリズム」の3曲目が再生されて、これがじつに素晴らしくて10分弱のあいだうっとりと聴き入った。おおよそエレクトリック・ギターにおける最高純度のノイズが、うねりつつ高まりつつ沈降しつつ不断なく続き、ドラムスは矢継早いキックと飛散する鳴り物で場に深みを添え、それらが親和的に交差しあい、浸潤しあい、脈絡も目的ないままどこまでも続く。海面をじっと見ているときのように、見れば見るほど波のかたちが変化していくのがわかり、しかしさっきから同じことが永遠に繰り返されているだけではないかという予感もある。それにしてもギター、じつにうつくしく官能的な咆哮。ギターは本来こういうふうに演奏するための楽器なんじゃないかと思えてくる。