水元

常磐線は高架上を走っていくので、車窓から葛飾区の風景の広がりを見渡すことができる。亀有、金町、松戸までの、中川を越えて、工場や施設の敷地を越えて、徐々に建物が密集し始めて、やがて駅前にいたる景色を見ているのが、僕はなぜかわりと好きで、古い建物や住居も多く残り、庶民的喧噪感と郊外の寂れ感が混ぜ合わさってるような葛飾の雰囲気を、好ましい外観の街並みに感じている。たぶん松戸へ行く機会がまれで、そっち方面の電車から見える車窓の景色をまだそれほど見慣れてないから、というのもある。たとえば西武池袋線なら、練馬区を過ぎたあたりから広大な地面に建物や住宅がびっしりと広がっている景色が見渡せるけど、僕はあれは昔から好きな景色ではない。どちらかと言うと、目を背けたいというか、大げさに言えば絶望感に近いものを感じる。あの景色にはなぜか、逃げ道無し、四面楚歌の思いが、沸きあがってくるのだ。理由はわからない。二十代にさんざん見た景色だからかもしれないが、それだけでは理由にならない。西武池袋線に乗ってる時間が長いから、そのうんざり感に重なってるのかもしれない。とにかくあれは、僕にとってなぜか閉塞感の景色で、よほどごちゃごちゃしている葛飾の街並みの景色の方に風通しの良い解放感を感じるのだから不思議だ。

水元公園をぐるっと一回りしたら、最近家の周辺ではついぞ見かけなかったオナガもシロサギも元気そうだった。やはり、公園にはいるのか。彼岸花が満開だが、あの赤色は、どうにも品がないというか、禍々しいというか、湿地を這うイモリを裏返したら腹の赤い模様が見えたときみたいな、うわー…と思う感じ、そんな赤色だと思う。あと、公園に限らず今や外を歩いていると、ここ数日はどこでも金木犀の匂いに満ち満ちていて、それがあまりにもきつ過ぎる。あれの匂いがしてこない場所を探す方が大変なくらいだ。どこもかしこも植えられまくっているからなあ、秋には秋の騒々しさがあるという感じ。