人物

ある人間を夢見て、それを現実へ押し出そうとするときに、まずは心臓を思い浮かべるところから始めて、周囲の器官もつくって、手足や胴体が出来て、いちばん手間が掛かったのは、頭髪の一本一本を仕上げていくことで、やがて全身が出来上がったけど、その登場人物はまだ目を開かないし起き上がりもしない…という「円環の構造」的なエピソードには、妙に惹かれるところがある。小説の登場人物を作り上げるのに、そんな風にはじめることができたとしたら、それはどんなことだろうか…との思いに憑かれる。

絵を描くとき「人物を描くには、どのようなやり方が可能か?」を考えたことはある。それこそ、ある特定の単位を作る(ある部位を順々に描く、という意味ではなくて、まさに心臓ひとつ、器官ひとつの単位から描いていく。あるいは物質ではないものから描いていって、最終的には人体という"その物"にする、ような。)、それを繰り返して積み上げていって、やがて「人物画」は出来るのか?と。それはおそらく「人物画」を生成するためのプロセスではないのだが、だからこそ、それに挑戦すべきではないかと思ったことがある。

それはフランケンシュタインとか鉄腕アトムとかの人造人間への憧れみたいなものだろうか。そうかもしれないが、なにしろその「動かなさ」「無理な感じ」に、惹かれるところがある。

小説を書くとしても、同様な取り組みの可能性を探ることは可能じゃないだろうか。