TOHOシネマズ 西新井で、ウェス・アンダーソン「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」を観る。オムニバス形式というか、異なる三つの話で構成されていて、よくよく考えると、こういう構成はウェス・アンダーソン作品にたいへん似合ってるとも思った。
相変わらず、ものすごくカッコいい世界観と美術と各種意匠と展開スピード。ものすごくオシャレでセンス良くて気が効いてる車や洋服や家具調度品のように、そこに何の根拠も理屈もなくただひたすらカッコいい。こういうカッコよさがいかに人を魅了し、興奮させ、夢中にさせるかを、それ自体で示してくれているかのようだ。こういうものに一度でも夢中になってしまうと、寝ても覚めても昼も夜も、そのことで頭がいっぱいになって、すっかりイカれてしまう、そんな強力なパワーというのものを、かつては様々なカッコいい何かに出会うたびに感じたものだと、ちょっと過去形で思ったりもする。
イケてるグラフィック系のデザインやコンテンツの、有無を言わせぬセンス一発のパワーというのは、若い頃だとほとんど目もくらむような衝撃派のように飛び込んでくるのを全身で受け止めて、その興奮に打ち震えるようなものだったと思う。それはウェス・アンダーソンにかぎらず、そういうカッコいいものは世の中にいくつもあった気がするけど、それは自分が若かったからそう思うのか、それともこんな有無を言わさぬカッコよさをいまだに追及してるのは、もはやウェス・アンダーソンくらいしかいないということでもあるのか。