ナイト・フィーバー

サタデー・ナイト・フィーバー」でのジョン・トラボルタのダンスは、たとえば同時代のマイケルジャクソンなどとくらべたら、まったく大したことないだろうし、フレッド・アステアのような華麗で完璧でひたすら観る者を魅了するような技量とセンスに満ちているというわけでも勿論ない、ということになるかもしれないが、しかしそういうことではなくて、たぶんあのダンスで彼はあの店のヒーローで、それはある酒場とか、あるゲーセンとか、あるバッティングセンターのヒーローのようなもので、それはもとより大した凄さではないのかもしれないけど、でもその店だけであるならば、彼は確実にヒーローだ。

そしてディスコにおいては、ヒーローみたいな人とそうじゃない人の間に、おそらくそう大きな格差があるわけではない。もちろんヒーローはモテるし人気者だけど、それ以外の者の居場所がないわけでは全くない。ヒーローじゃない人が自分なりのやり方で踊ってもいいし、ときにはそんな人の踊りで、周囲が大いに沸いて、盛り上がってしまうこともあるだろう。もちろん(彼の兄のように)、その場所がまったく肌に合わない人もいるだろうし、ときには喧嘩とか、集団が個人を侮蔑するとか、くだらないことも起こるだろう。しかしディスコは原則として、よりふさわしい者とふさわしくない者が分別される場所ではなくて、できるだけ多くの人がそれぞれ楽しむためにある場所で、だからダンスの上手下手の尺度だけではない、もっと前向きに楽しさや気持ちよさをとらえようとする共通の意志にもとづいた集団意志で、そうであるかぎりディスコは天国のような場所になるのだろう。

まあ「サタデー・ナイト・フィーバー」で、ディスコは天国のような場所のようには描かれているとは言えないというか、あのディスコは天国でも地獄でもなくて、もしかするとジョン・トラボルタは場合によっては、結果的にいつかディスコを卒業してしまう可能性も、なきにしもあらずなのだけど、しかしジョン・トラボルタのダンスは、そこが天国のような場所(だった/であろう)かもしれないという、その片鱗というか予感というか、そうであったら素敵なのに…という幻想的期待を、観ているこちらに喚起させるものはあったと思う。(それにしても、今となってはもはや、さすがに古いのだろうけれども…) 

Saturday Night Fever (Bee Gees, You Should be Dancing) John Travolta
https://www.youtube.com/watch?v=LUID0jSh2Ic

Saturday Night Fever - Night Fever (Bee Gees)
https://www.youtube.com/watch?v=2tG5SllettU