人は、暑くても寒くても死んでしまうけど、やはり人を少しずつ衰弱させるのは寒さの方だろうと、これまではなんとなく思ってきた。寝たきりの老人が、こときれるとしたらそれは冬だろうし、もし春をむかえたなら、その生命はもう一年の猶予を得たものと、深く考えもせずそんな風に思っているところがあった。でも別にそんなことはなくて、いつどんな季節にあっても、昼も夜も夏も冬も、人は少しずつ衰弱する。
季節が見せるさまざまな要素は人を楽しませるけど、それは季節が心身におよぼす負荷の感触が、人のよろこびにむすびついているからだろうか。だとしたら、季節と身体とのぶつかり合いで身体が衰弱し、そのとき死へ向かう苦しみを感じるとしたら、その苦しみとは季節を感じるよろこびとかけ離れたものではなくて、むしろ近しいのかもしれない。