御茶ノ水から、靖国通り昭和通り、春日通りと辿って、湯島まで歩く。最近は浅草もそうだけど、秋葉原から上野にかけて立ち並ぶ雑居ビルのなかにも、主に外国人観光客が利用するのだろうホテルをよく見かける。そんなビルの入口からふいに若い女性があらわれて、一人でぐいぐいと、どこかを目指して歩きだす。ああ観光客だなと思う。別に楽しそうでもなければ浮かれた感じでもない。このへんの住人か職場から出てきた人であってもおかしくない。でもその後ろ姿に、なぜか説明のつかない不思議な唐突さがあって、きっと観光客だと想像させる。ひとりで外国へやって来て、あるいは友人らと一緒かもしれないが、いまは個人行動しているのではないか。でもなぜそう思うのか、かつて大昔に自分も、ああして一人、ホテルを出てひとりでどこかを目指して歩いた、そのときの気分を思い出させるからだろうか。