金曜日の夜、人形町駅のA5階段を上る。夜の闇を数々の店が灯りで照らしている。繁華街のざわめきや賑やかさはひかえめで、人通りも車の交通量も少な、しかし連なる店は数多くて客を吸い寄せるかのように魅惑的な光をたたえていて、これは楽しそうだ、一軒一軒訪ねて飲み歩きたい気持ちにさせる場所だ。目的の店の前で三人集まった。この会も今年で約十年になるのだ。そうだった、最初は僕とEとKとIの四人がたまたま会社に残っていて、なんとなく東上野の韓国街に行ったのがはじまり。あれから十年だよ。Kは退職。Iは結婚。Eは身体壊したけど復活した。Sが参加したのはもっと後だけど、それでも2011年か。そんなに昔か。あの店、まだあるのかね。あるの。すごいね。変わらないね。おそろしいね。会社も変わらないね。いや全然変わった。人も変わった。もう誰もいない。誰も知らない。来る人去る人ね。記憶も遠いな。


(父の通夜の日の朝、幼馴染のNさんが亡骸の前で「功ちゃん、逝くの早過ぎるなあ、あっけないなあ、小学生のときは、いかつかったのになあ、チャンバラのとき、自分はいつも切られ役で!」と呟いて、傍で聞いていて思わずふき出してしまったのを、今急に思い出した。)