パンダ

昨日の明け方だったが、わー!っと叫びながら目を覚まして隣の妻を驚かせた。何の夢を見たのかを聞かれて、パンダの夢だと正直に答えた。なんでパンダが怖いのよ、かわいいじゃない、と言われて、説明を放棄した。あの怖さを相手にわからせるような説明を、自分には絶対にできないだろうと予測されたからだが、ためしに今ここでその説明をこころみたい。

薄暗く汚れた廃屋のような場所である。あたりは無人で何の物音もない。廊下を歩く自分の足音が響くばかりである。ふと見ると、奥まった部屋の外れたドアの向こうに、何かの動く気配がある。よく目を凝らすと、パンダである。僕は、とくに成長した大きさのパンダをかわいいとは思わないので、そのパンダはかわいくない、と想像してほしい。僕は踵を返し、元の場所に戻ろうとした。そのとき、パンダが逃げた、との声が聞こえる。ざわめきのイメージ、ニュース映像、カメラのフラッシュが瞬くイメージを思う。その場で振り向くと、さっきの場所にパンダはいない。おかしいと思って、そのまま歩いて、つきあたりの角を曲がると、五メートルほど先に、さっきのパンダがいた。あ!いた!と思って、うわー!と叫んだ。

怖いはずだ、これじゃあ。