久しぶりにE氏と会食。E氏はもう半年近く在宅ワークが続いているらしく七時定時の業務を終えて待ち合わせの場所で落ち合えたのが八時過ぎとやや遅めスタートとなり、いつもならともかく今のご時世だと飲食業界はまだまだ警戒自粛の空気が色濃くて、当日予約でどうにかなるだろうと甘く予想していたものの蓋を開けてみたら候補の数件に続けざま断られる。わりと閉店時間短縮気味な店が多く、それなりにきちんとした料理を求めると今の時間からでは思った以上に厳しいようだ。その場で昔の記憶をたどってさらにいくつかの電話番号を拾い出し、かなり直球フレンチな店にダメ元で電話したらOKとのこと。この店に行く展開は予想してなかったけど久々の訪問がかなって嬉しい。しかし今日電話した店の中ではこの店のシェフが一番高齢だし、一時期体調を崩されて店休していたなどの噂も聞いた気がするけど、今夜ふつうに平常営業してたとは。しかも入店したら店内満席に近くてさすがの安定感だ。年に一度くらいしか来ないけどいつ来ても熟練の度合いが極まっているというか王道の職人技の普遍性を感じさせるというか、まあコースでオーダーしてるかぎり驚きや意外さは無いのだけど。しかしフランス料理の繊細で高度な技術がもたらす味わいと、下町界隈のいつも同じ美味しさの定食がスピーディーにがんがん供される食堂的味わいの、両方の良さが合わさってるとここで食事するといつも思う。ワインもやたら高級繊細な方向ではないがこれはこれでなかなか捨てたもんじゃないと思えるようなヤツが気取らず出てきてそれで充分楽しく、そのあたりの按配もちょうど良いのだ。こんなもんでいいだろう?はい、とてもいいです…という、納得の感じ。寡黙で実直な日々の営業精神というか、人間の毎日のお仕事、料理人の定常業務としてのお店営業の、良い意味での生活感がある、そんな非日常感を欠いたスペシャルじゃないフランス料理は嫌だと考える向きもあるだろうが、この地に足の着いた感じこそが信頼に足るのだとも言える。