深田特集続き

昨日観た深田晃司海を駆ける」(2018年)は、自分にはいまいちよくわからなかった感じ。ディーン・フジオカ演じる謎の男が、あまりにも超能力者すぎるというか、キリスト並みに奇跡起こし過ぎというか、あそこまで行くとほとんど救い主みたいになってしまいそうなはずが…そうでもない、なんか変な感じ。色々深読みできる要素もあるのに、あえて軽い爽やかな後味だけ残した感じか。夏の海辺で若者たちが楽しく過ごしているだけの世界のようでいて、決してそれだけではなくて、いくつかの謎や説明の無さも残されている、それが目覚めたと同時に忘れかけている夢のように、しばらくのあいだ気になりもする。

続けて深田晃司「本気のしるし」(2019年)、30分のテレビドラマ×10回分を一気に観たが、作家としての深田晃司らしさというものをまだよくわかってないながらも、何となく、ああ、この感じか…と思うところあり。

あきらかに怪しい、かなりヤバそうな女からストーキングされる、と言うよりも絶妙な人たらしテクニックというかこれみよがしな媚態とは違う変な押しつけがましさと厚かましさで個人領域にぐいぐい入ってきて、後でしょげてうつむきながら謝られるけどもう遅いみたいな、それでなぜかこちらの弱みというかガードの外れてる部分を正確に突いてくる絶妙なテクみたいなものに男がハメられていく。餌食になった男は女のいいように使われて、借金を肩代わりさせられたり家に押しかけられたり、さんざんな目にあって色々失う…的な話。

こういうややこしさの中にずるずるとハマっていくときの、もはや抵抗できない、このままなすがままになるしかないという恐怖と不安とあきらめとかすかな恍惚感の感触は、以前みた「よこがお」にも、形は違えどたしかに感じられたものだと思った。女を演じた土村芳という人のごくふつうの美人でヤバい要素ほぼゼロな感じ、それがかえってヤバい女としての絶妙な目立たなさと地味さ加減を引き立たせるように思ったし、若い男を演じた森崎ウィンの生真面目さ、仕事熱心さ、融通きかなさ、でも女付き合いは二股かけてる適当さみたいな妙に掴みどころない感じも面白いと思った。

但し「狂気度」は控えめというか、最初は説明抜きにヤバかったはずの女が、途中から何となくそうではなくなって、その他の登場人物たちと同等の場所に降りてきてしまったような、それで後半はけっこうふつうの男女幾人かの揉め事話になってしまった感じはした。まあ、ああいうだるーい痴情のもつれみたいな展開こそ、この手の話の王道であるとも言えるかもしれないが。あとラストで訪問販売しながらしらみつぶしに男の居所を探すあたりも、けっこうすごいことはすごいが。