オフィスの引っ越しみたいなやつに十年に一度くらいの間隔でなぜか関わることになる。二十年前に入社して、たしか一年後にオフィスを引っ越しして、主にネットワーク回りを手伝わされて、今後のためにちゃんとおぼえておいてねとか言われたけど、当時は何をおぼえればいいのかさえ、まるでわからなかった気がする。その十年後、ふたたび引っ越しになって、その際は当該プロジェクトの中核ではあったが、たくさん介入してた業者との調整が主な仕事で、あれはとても楽だった。毎日喫茶店で電話連絡を待って、連絡が来ると現地に行って確認してOKですと言うだけの仕事…と云えば大げさだが、大した仕事もなく誰もいない新設オフィスで一日中だらだらとコンフィグをいじってるだけのいい感じの虚無な毎日で、剥がれた床下に何百食分のうどんかそうめんの如く敷設され束になって這っているケーブル類とその先で猛烈に点滅するスイッチ機器類など見ると、ああインフラだなあ…とか思ったものだった。で、さらに十年経って、つい先日軽く発生した障害時には何十本かを臨時回線に繋ぎ変えて、あのときいつものオフィスに猛烈な量でLANケーブルがうようよ這い回り人々の足元にまでおよんで各地でバカハブが光りまくってたのは、なんとなく昔の会社っぽくてやや感慨深く思うと同時に、なんらかの災害的な非常事態っぽさも感じられてさらに奥行き深いものがこころに馳せたし、さらに今月と来月で、小さな拠点移動をあらたに控えていて、ふたたび空き室をオフィスに仕立てる作業が待っていたりもする。なぜかそんなことばかりしていて、なぜか自分が使う拠点の物理ネットワークは自分自身で敷く運命にあるらしい。