テレビをつけたら、キューブリックの「シャイニング」が放送されていたので、なんとなく最後まで見てしまった。息子が最初に、廊下の突当たりで二人の娘を見てしまうあたりから、エンドクレジットまで。今さらだが、そんなに面白い映画ではない…とは思った。というか、もう耐用年数が尽きたというのか、作られてからこれまでの間、たくさんの後続作品からサンプリングされた後の、もはや抜け殻のようになった映画のようにも感じられた。
ジャック・ニコルソン演じる作家=父の、果てしないイライラ、憤り、落ち着かなさ、やるかたない憤懣が、映画全体に濃厚にたちこめていて、お屋敷の幽霊たちよりもそっちの方が、よほど色濃い感じがする。それにこの作家=父は、確かに最後は、斧を振り回して妻と子供を殺そうとするのだけれども、外から駆け付けた管理人だけは見事に殺害するものの、目的の彼女らには怪我ひとつ負わせることができない。それどころか我が身を守ろうとして繰り出される妻からの咄嗟の攻撃をモロに喰らい過ぎで、バットで頭を殴られて気絶させられてるし、デカい包丁で手を切り付けられるし(あのシーンは、出血もなくさほど大したダメージに描かれてないけど、あれはメチャメチャ痛いと思う。たぶん大出血の、場合によっては生命にかかわるくらいの大怪我だと思う。)、最後は年端も行かぬ息子の策にハマって真冬の夜に凍死の憂き目にあう。
まさに良いところなしの、一つも見るべきところのない、愚かで惨めで哀れなおじさん…という感じである。かつて妻と娘を殺害したらしいバーの給仕の男(の幽霊)の、それとなく示される期待にもこたえられなくて、しかしジャック・ニコルソンにはあまりにもその才能がなかったというか、先人の彼にくらべると、まるで冴えたところがなくてなさけない限りで、たぶん屋敷の幽霊たちからも「あいつ思った以上に使えねーな」とか言われてそうで、余計に哀れに感じる。まあ、あの管理人さえ殺すことができれば、屋敷の幽霊たちとしては目的は適って、それで良かったのかもしれないが。
追記:Wikipediaを読むと、上に書いたことはいろいろ間違っているようだ。殺されたのは管理人ではなく料理長らしいし。