先日観た「新ドイツ零年」は、VHS録画の映像ファイルをPCで再生したのであまり良好な画質とは言えず、とはいえそれはそれで味わい深いところもあるのだけど、youtubeに同作品の英語字幕版がフルで上がってるのを見つけて、それを見たら絵がたいへんきれいで驚いた。あまりにも寒々しい荒涼とした景色ばかりな印象だったのだけど、むしろ静謐でうつくしい景色がひたすら続くように見えた。冬らしい外の光が室内へ差し込むところとか、瓦礫まみれの地面に落ちている書物とか、いちいち美しくて、ただぼーっと見惚れてしまう。音を消しているから余計にそう見えるところもある。

映画は、見ると聴くと読むとが等価値の扱いで構成される。で、それをさらに字幕付きで観るというのは、読む要素がもうひとつ追加されてしまうのだから、よく考えるとすごいことだが、ゴダールはとくにそうだけど映画を再見すると俄然面白く感じられるのは、とくに字幕を読む必要が薄まった状態であらためて見ることで、ようやく映画本来の姿を観ている気になるからだろう。あるいは音だけ消したり、途中から部分的に観るのもそうだ。