先日、近代美術館でみた小林古径「茄子」。青々と、葉まで青い。青というか、実も葉も、すべて紫に染まっている。茄子である。この絵だけ観てると、まるで茄子から上質の酒が作れそうな気がしてくる。あれ、茄子酒、なんて無いんだっけ?と思った。そんなものはあるわけがない。茄子の漬物の、水分まで青く染めてしまうあの色だけ見ると、なんとなくそう錯覚してしまう。青い酒がとれそうに思ってしまう。茄子なんて、何の味もない。酒のかけらもないはずだ。いや、でもわからない。そうでもないかも。茄子なんて、あれはなぜ、食べるとおいしいのか。その時点ですでに不思議だ。あれを食べると、おいしいのはほんとうに不思議だ。食べるにせよのむにせよ、素人にはさっぱり判断がつかない。むしろあてずっぽうに直感でいいかげんなことを云ってるくらいで丁度いいかもしれない。食べ物も酒も、もともとのものから、どう転ぶかわかったものではない。