十代や二十代の頃にはわからなかったことが、三十代やそれ以上になってわかってくることもあるし、年齢を重ねるのは悪いことばかりじゃないでしょうと相手に言ったら、年を経るとどんなことがわかるようになるんです?と聞かれる。うーん、そうねえ。たとえば旅行に行ったら、その場所がわかる、と答えたら、え?意味が解りません。旅行先がどこか、若い頃はわからなかったんですか?と驚かれる。そう、若い頃って、そこがどんな場所か、ぜんぜんわかってなかった。沖縄も京都も長崎も能登も、名前がそれというだけで、それぞれのの違いも、自分のいる場所との違いも、なにもわかってなかったけど、今は当時よりも、そういうことが少しはわかる気がする。そういうのってない?と聞いたら、信じられない…と、呆れられる。
でも、わかるから若い頃よりもそれを楽しめるとは限らないかもしれない。場所のことなどわからないままの方が、よほど楽しいのかもしれない。