在宅


いくらなんでも暑過ぎるだろうという事で終日在宅、というかもはや屋内避難。前日に続けて昼から飲酒しつつ窓の外の狂ったような光の降り注ぐ様子を見ていた。CSで放送した濱口竜介「永遠に君を愛す」を観る。濱口竜介らしいきわめて強烈な事前配置の雰囲気に満ちた図式的演技実験的な雰囲気の作品だった。


続けて三宅唱「THE COCKPIT」を観る。まったく前情報も前知識もなく観たのだが、ヒップホップ・アーティストOMSBとBimの創作の現場を捉えたドキュメンタリー作品で、かなり面白かった。じつは僕は日本語ラップについて音楽の中でもあまり聴かないジャンルというかやや苦手ジャンルだったりもするのだが、OMSBは菊地成孔関連で何度かステージパフォーマンスも見たことある数少ない日本語ラッパーでもある。ひたすらサンプラーを叩いてバックトラックを作っている様子を撮影した映像がえんえん続いて、何度も何度も録りなおしするところも、そうそう、音楽作るってこうだよなあ、昼も夜もなく、ひたすら同じことばかり何度も何度も、何百回も何千回もこうやって聴いては試してを繰り返して作るんだよなあ…と思いながら、彼らの、ラッパーとしての感覚の生々しさが肌身に感じられて、こういう感じを見ていられるのはとても楽しい。


夜になって、陸上競技アジア大会の百メートル決勝を見る。ついに日本選手の公式九秒台が出たか(追記:桐生 祥秀が2017年に日本人初の公式9秒台を出しています。)と思ったら、何と山県亮太自己ベストタイの十秒フラットで三位。真面目な話、何か目に見えない障壁というか、「別に明確な理由はないけど、けして越えられない壁」というのは、この世に実在するのではないかと思わされるような結果だった。技術開発とか学問や研究とかも、最先端の分野でしのぎを削ってる人々たちだけに見える、あと少しのはずがどうしても越えることの出来ない山の頂きの部分というのが、あるのだろうなあと…。多くの飛行機乗りを犠牲にしてきたスタンレー山脈の魔女が笑うみたいな…。しかし走り終わった選手当人のさっぱりした表情を見たら救われる思いがしたというか、ここまでギリギリに張り詰めた状態で決勝まで残って最後は自己ベストタイで終わるのだからほぼ完璧な積み上げかたであって、後悔の余地などまったく無いだろうとも思うが、でもやはり、悔しいのだろうなあとも思う。そして9秒91で勝利した中国の選手の、スタートからゴールまでの完全無欠な完璧さも凄かった。一番というのは、これほど完璧なものかと…。