U-NEXTで加藤泰「丹下左膳 乾雲坤龍の巻」(1962年)を観る。斬り合いで片目から激しく出血した丹下左膳(大友柳太朗)の苦悶の表情が画面いっぱいになり、タイトル文字が大きく出て、家の家来共が立ち合いで「殺陣」の場面がめまぐるしく繰り広げられているのを背景に、次々とキャストとスタッフのクレジットがかぶさる。スピード感を優先したオープニングという感じで期待を高めるが、せっかくの殺陣シーンが隠れてしまい贅沢というか勿体ないようにも感じられる。
長屋暮らしのスリの与吉(東千代之介)とお藤(久保菜穂子)との関係、彼らとのチームタッグによって、最終的に自らを捨てた悪の殿様を成敗するまで。父親の仇である左膳に復讐を試みる「女剣士」(しかも二人は密かに惹かれ合ってる…)とか、大雨の夜に堀を乗り越えての脱獄作戦とか、囚われたお藤を救出すべく、見張り役らを始末しながら殿様のもとへ忍び込むとか、最後へ至るまでにさまざまな工夫が凝らされていて楽しい。
ヒロインお藤(久保菜穂子)の、今見てもこざっぱりとしたうつくしい姿。堅気の女ではない、やや煤けて、蓮っ葉で、向こうっ気の強い、それでいて左膳に対しては一途に寄り添おうとする、いかにもなドラマにおける女の役割を、きっちりと演じているのがとてもいい。大友柳太朗は、なんというか今ではちょっと考えられないくらい大仰な身振りと表情で、もはや映画なんだか歌舞伎なんだかよくわからないような感じでもあるけど、あの真っ白な襦袢をゾロリと着流して眼光鋭く虚空を睨んでいるのは、これはこれ、完璧に仕事してますよという感じで、こういう出来上がってるものに、今さら文句を言うような筋合いではない。
殿様の卑劣さとか、大岡越前の事なかれ主義な狡猾さとか、誰もが計算ずくで動いて、情も救いもない殺伐とした空気が全編を支配していて、時代劇でありながら凍てつくような厳しさが立ち込めている感じなのは、おそらくそれこそを描きたいとの狙いが、作り手の側にあるゆえなのだろう。