年女

横浜、夜景、ベイクオーターの光、ゼロックス資生堂、キラキラ光っている。でももう見飽きちゃったので、なんとも思わない。あのソニーの新しいビルが完成したら、ますます光が増して、このへん一帯、夜なのにまるで真昼みたいになるかも。

彼女は誕生日が僕と一月しか違わなくて、知り合ったのが2010年だから、当時は二人とも39歳だったのが、今となってはとても信じられない。彼女は若く見えるし、あの当時で、すでにそんな年齢だったなんて。もっとも、今でも僕には、彼女が昔とほとんど変わらないようにみえるのだが、それを言うと彼女は、それはお互い同じだけ年齢を重ねているのだから当然、お互いがお互いを見えてないから、きちんとわからないのよ、と笑う。

今年はあまり良いことがなかった、そう彼女は言った。去年からずっと、なんだか変テコなことばかり、納得のいかないことばかり続いたんだと。私はずっと、静かに静観してきたつもりだったけど、ここにきて、やっぱりこれっておかしい、これはへんだ、もうこのままでは続けられない、そう思った。前々から思ってたけど、確信に変わったのが今年ね。だからそれで、もうやめるんだからと思ったから、それ以降、何があってもある程度は、我慢できたところはあるのよ。でもやっぱり、思いはいろいろ、納得できないことはいろいろ、あるわよ、でも、それはそれで、仕方のないこと。

ね。私って今年、年女だったのに、ぜんぜんツイてなかった。なんでだろう。でもあなた、昔のことおぼえてる?十二年前って、どうだった?私、前の年女のときも、たぶんツイてなかった。リーマンショックだっけ?あれってもっと後か。でも、やっぱりすごいバタバタしてたのよ。なんかいっつも、節目でツイてない感じ。みきわめが難しいのね、いつならいいのかわからない。ねえ、昭和の終わったときのこと、おぼえてる?私たち、高校生だったでしょ?あのときは、突然だったけど、今は、最初からお膳立てされて、はい!変わりました!って云って、それで変わったじゃない。あれって、どうなの?なんか、影響あるかな?私ってもしかして、平成がずーっと、性に合わなかったのかな?もしかしたら、三十年、ずーっとイマイチだったのかな。だとしたら、ね?来年からは私、けっこうものすごく、可能性、あると思わない?何があっても、おかしくなくない?今までの貯まっていた素敵なことが全部、一気に戻ってくるのかもしれないって思わない?別に、すごい幸せじゃなくてもいいけど、ふつうにこころ穏やかに、ゆっくりできればいいだけなんだけどね。

あなたがそう思うなら、きっとそうだよ、マジでそう思う。そのはずだよ。そんなもんかもしれないよ。しかるべき場所に来たら、意外にあっさりと、ああこれで良かったんだって思うんじゃないの?来月か再来月あたりにさ。ってうか、もうお正月が来ちゃうね。なんかげんなりじゃない?当たり前だけど、今年が、自分の生涯、これまで生きてきた中で、もっとも最速に過ぎた一年だったよね、それはもう、唖然とするほどのはやさだったね。そう思わない?

そうかもね。今までもそうだったね。十年なんてすぐだったね。