初夏の日差し。木々の葉が、光を受けながら風に揺れて、緑色に属する色彩のバリエーションが、見える範囲をめまぐるしく行き来している。もしあれが絵の具なら、何種類あれば足りるのか。いや、絵の具の種類が必要数あっても、それがどうしたというのか。絵の具があったら、絵でも描くのか?そんな気は無いくせに、そんな、あとから再現させる気なんて、さらさら無いくせに、今起きたことは、この場で考えるしかない。


私はあえて言う。「あの、葉がきらきらと光を反射しながら揺れてるところを見て、
あれって、ぜんぜんキレイじゃないよね。」

「うーん。そうかもな。」


木々の葉というよりも、そんなことを考えている自分も含めた全体で考えたらどうか。


自分がここにいる。木々は、数メートル先にある。葉は、その上空十メートルくらいに繁っている。その手前と向こうに、空気がある。粒子のようになった光の反射がある。葉にも光が乱反射する。向こうには遠景があり、その向こうには空がある。空はここから数千キロ隔たっているはず。太陽の光はそれらすべてに反射している。太陽と私との間には、数万キロほどの距離がある。太陽から空、空気、遠景、中景、目前十メートルにある樹木、それらすべてが、自分の立ち位置から重なって見えている。重なっているから、こういう風に見えるのだとしか思えない