2009-01-01から1年間の記事一覧

上野一巡

翁庵で葱せいろを久々に食した。小雨の降る寒い日だからか、いつもより店はすいていた。店を出てから傘を差して、上野駅方面に背を向けて、浅草通りをどんどん歩いていって、稲荷町の地下鉄の出口が見えたところで右折して、清洲橋通りをまたゆっくりと歩い…

コメの幽霊

妻が、何気なく普段あまり使われない炊飯器の蓋を開けたら、そこにはまだ、いつかのコメが少し残っていたらしく、しかもそれは、もはや誰の記憶にも無い忘れられた存在として、もう何週間も、いやひょっとすると何ヶ月も前のものかもしれないという状況だっ…

浩介/働く男として

「カンバセイション・ピース」の登場人物の中では、僕はなぜか個人的に浩介という人物のことばかりが気になってしまう。ずーっとギターを弾いている浩介のことを。主人公の高志は多分、浩介のことをとてもよくわかっているつもりで、信頼に足るやつだと思っ…

Yes-No

今なんていったの、ほかのこと考えて、君の事、ぼんやり見てた…的な曲はオフコースの「SELECTION1978-81」の一曲目。これを初めて聴いたのは小学生のとき。よくよく考えると、今から30年前の実家にはロックやポップスのレコードは一枚も存在していなかったし…

かねがふち

秋晴れ。不透明水彩絵の具のブルーをぼってりと厚く塗りこんだような濃い青空。桜の紅葉が、完全な赤ではないがゆえの淡い微妙な赤味を帯びてまだらに染まっているのがうつくしい。桜の紅葉がもっともうつくしい理由は、ドウダンツツジやモミジの派手で鮮や…

大浴場

日比谷線の仲御徒町の出口の階段を上がったら、雨がやんでいてものすごい晴天になっていた。ほんの20分前まで激しく降っていたのがまったくの嘘のような日差しで上着を脱いで歩いた。しかし路面もビルの壁も商店の軒先も行き交う車の車体もまだ完全に雨に濡…

古い家

「カンバセイション・ピース」の舞台となる家は昭和二十三年に建てられて、全部の部屋が畳で、部屋と部屋の仕切りはすべて襖の家で、最初は伯父と伯母と四人の子供の計六人がいて、そこに主人公の家族(母、本人、弟)の三人が加わって、それら全員が部屋ごと…

冷え込み

ぐっと冷え込みの度合いが増した。全身を包んでいる空気の冷たさの新鮮さを感じながら歩く。電車に乗り込むと、ぼんやりとした暖かさが車内に満ちていて、この暖房の効き方が如何にも冬だと思う。雨は午後を過ぎてあがったのでそれは良かった。これを書いて…

いないことを救う

カンバセイション・ピースの登場人物たちの、どこまでもひたすら延々と考えを巡らせているのを読み続けていると、これは小説の登場人物が何がしかを延々考え続けている事に対して僕がずっとそのかたわらで付き合ってあげているようなものだと思う。たぶん人…

千代田

千代田線の湯島で下車して、白っ茶けた風の吹きすさぶ仲町通りをとぼとぼと歩き、上野のツタヤに寄ってDVDとかを借りて、その後松坂屋で少し買い物した後、そのまま地下の銀座線に入って、上野広小路から日本橋まで行って乗り換えて、東西線の竹橋で下車して…

日比谷

ポン・ジュノ「母なる証明」を観る。これはおもしろい!最初から最後まで盛りだくさんの面白さで、とても楽しかった。このまま直ちに「殺人の追憶」も観なければ、と思った(しかし帰りにツタヤに寄るのを忘れた…)。その後日比谷公園まで歩いて、菊まつりとい…

Reply

特に気になる点はありません。おおむね問題ないと思います。もしきになる点やお気づきの点等ございましたらお気軽にお問い合わせください。ご不明点やご指摘事項なども遠慮なくお申し付け下さい。必要に応じて電話によるナビゲーション対応も可能でございま…

November

はっと気づくともう11月なのだ。でも11月は嫌いではない。11っていう数字の並びが悪くない。11月というと一年の中でも如何にもすわりの悪い感じで、本当に月と月の橋渡し的な役割しか担っていない感じの、なんとも中途半端な感じがあって、別段なにかメモリ…

潜水

あと5メートル進んだら、すぐに浮上して呼吸したい、と、さっきからずーっと思っている。そう思いながら、延々と潜水を続けて、ついに25メートルの壁まで来てしまい、そのまま浮上せずに水中でターンしてしまい、なおも潜水のまま進んでいる。呼吸を止めてい…

自室より

今日という日は「頼まれ仕事」をやるための日という事で最初からそれ以外の事をほぼすべてあきらめている状況で迎えたのだが、しかし朝目覚めて外の日差しの輝かしさを見ると、さすがに少しだけでも良いから直接太陽の光を浴びたいと思った。しかし、とりあ…

冬日

ものすごく寒い夜だが、その寒さにむしろ喜んでいた。真冬のようだと思って楽しい気分になった。そのまま風に逆らいコートの裾をはためかせて歩き続けた。真正面から吹き付ける冷気に、顔も髪も鞄も手も全て感覚が無くなるほど冷たくなったが、それこそが冬…

軽井沢

昨日から妹夫婦と我々夫婦と母親の計5人で軽井沢へ行って、先ほど帰宅した。我々夫婦は完全にお客様状態というか、お荷物的存在で、行きも帰りもひたすら車の後部座席に座りっぱなしであり何の役に立つ動作も気を効かせた所作もなく、ただそこに居てうわーモ…

はにわ

薄暗い廊下の突き当たりに向かって歩いていて、向こうに何か、ぼんやりと誰かが居るなあと思ったら、どうやら女性のようで、単にその場に立ち尽くしているような様子だった。まっすぐに立っていて、真正面からまともにこちらを見返しているのが、近づくにし…

白昼

今日も外出。夜遅くに帰る。でも外出するのは面白い。こんな平日のこんな時間に、なぜ僕はこんな辺鄙なところを歩いているんだろうと思う。路肩の雑草やガード下の滲む赤錆とかを、じーっと見つめてしまう。どこだここは、どこだここは、と常に思っておる。…

就寝と起床

最近、毎日のように、もう1時間でも30分でも早めに寝て睡眠時間を確保したいと思っているのだが、しかしなぜ僕は、今日もこの時間まで起きているのだろうか。朝になれば、必ず後悔する事がわかっているのに、今の僕は、朝の僕を、また明日も苦痛の只中へ投げ…

台風一過

今日の空をあらわす便利な言葉。台風一過、という言葉でしか表現できないようなとんでもなく素晴らしい快晴の空。もはや季節がどうとか気温がどうとかいうレベルを超えている感じ。信号待ちのときに、思わず日陰に入りたくなるほどの日差し。 それにしても京…

子供の頃、ホースの中に入っている水は細長い形のままでホースの中にいる、という事を想像していた。あるいは水道の蛇口から出る水も、その見た目から、水として細い形をしている、と思っていた。しかし水は無色で透明で、あのようにさらさらとしていて、触…

100円ショップ

100円ショップに行くと、B4スケッチブックとか12色のクレヨンとか24色のカラーペンとかが売っていて驚かされる。これら全部買っても300円(税抜)である。安いなあ、と今更ながら思う。まあクレヨンの品質とか良くないしスケッチブックは10枚綴りで若干ボリュ…

携帯

家に携帯を忘れてきた事に気づいた。これから会社を出て客先に行かないといけない。上野から茨城県のかなり遠くまで行く。仕方がないので関係者にメールして、もしも何かあって連絡取りたいときは業務携帯を持っていくのでそっちにかけて下さいとメールして…

夜のタクシー

後部座席に乗り込み、助手席シートの裏に大きく貼ってあるその車の運転手の正面から撮られた顔写真と記入された姓名を見つめる。初老の男性。タクシーに乗るといつも、その顔写真を見て、今、目の前で運転している人物の後頭部を見て、この顔写真と目の前の…

会議

夜の11:30まで会議して結果すべて差し戻しになるんだからすごい。長い映画のラストでほとんど何も始まってない場所にまで戻ってきたときのようだ。というか、本当に映画じゃないの?というくらい、すべてが現実味を薄れさせたままの状態だ。終電のなくなりそ…

横顔

別にさほど親しい訳でもないし、特別気が合う訳でもないが、仕事の都合上、図らずも長年の付き合いになってしまっている人というのはいて、そういう人との関わりというのは、ある意味まったく無駄のない、そつのない、完全効率型の、ビジネスに特化した形式…

Forty Age Riot

もう30も半ばを過ぎた年齢だというのに、僕なんか40に手が届こうとしているというのに、今更、人が、人を叱ったり何事かを強制させたりできるものだろうか?というか、そんな疑問を抱いたことなど今まで一度もない。というか実を言うと僕は、昔からわりとそ…

大人

どんな事になっても自分で何とか解決策を見つけて自分で処理しなければならない。それが、大人というものだ。誰にも頼らず、自分だけの力で何とかする。そして、最終的には、成果だけを黙って差し出す。それが大人というものだ。そう思って頑張ってると、い…

一日の終わり

今日は一日、人から頼まれた用事をやっていた。難しいところが多々あり、かなり真剣に悩みながらやった。2時間くらいでけりをつけようと思っていたのに、結局4時間も掛かった。しかも、出来は思ったよりも良くない感じで、心身共にくたびれて、こりごりして…