窓の外


電車に乗り込み、つり革に掴まる。隣の女性の鞄に身体が当たらないように少し除けて、下を向き、他人との間隔を足元で確認する。ドアが閉まり、しゅーっと気の抜けた音がして、がたんと揺れて、やがて電車がゆっくりと動き出す。黒い窓の外の流れる光を見つめる。そこに写った、つり革に掴まっている自分自身を見る。この電車がどこ行きで終点には何時何分に着くのかのアナウンスを聞きながら、ずっとぼんやり窓の外を見る。たまに、窓に写った自分がぼんやりと自分を見ているのに気づく。目が会うので下を向く。窓の向こうの自分も下を向いたので、自分が下を向くとああいう感じなんだなあと改めて思う。