北千住駅から図書館まで歩く途中、住宅地を抜けていくとき、たまに路地の奥にネコがいることがあって、そういうときはこちらも立ち止まってネコをじっと見つめて、ネコの方もこちらをじっと見つめて、双方にらみ合いの膠着状態になることも多く、この前もかなり長時間、しつこくにらみ合いを続けていた。で、ふと背後に何か気配を感じたので、その方向を振り返ると、宅急便のトラックがゆっくりと僕らの前に近付いてきていて、運転しているお兄さんがしきりに手を「すいません!すいません!」の拝むしぐさでこちらに向けている。あ、あっと思って端に寄ったら、トラックはゆっくりとその路地へ入っていった。つまり僕たちがトラックの進行方向を邪魔していたのだが、おそらく僕らは、わりと長々その場に立ち止まっていたはずなので、つまりその間、あの運転手の人はクラクションも鳴らさず声も出さず、トラックのエンジン音もことさら上げることなく、こちらが自分に気付くのを待っていたのだと思われ、それは、ものすごく心の優しい人だと思った。仕事中で忙しいだろうに、我々のような見るからに無目的な二人を、音も立てずにわざわざ待つだなんて、どれだけ心優しくて余裕をもった人格なのかと思って、遠ざかるトラックを見ながらしばし呆然とした。