2018-01-01から1年間の記事一覧

痕跡

高幡不動尊は予想より人が少なかった。モミジの赤が背景にある陰影に一部沁みこんだような、黒々とした木の幹が途中からふと薄まって赤色に消えかかり、木の葉と後ろの空気が溶解して癒着してしまったようだ。 そういえば先々週の目黒自然教育園でも一部に痕…

定年

自分が所属している会社ではなく客先の大きな会社の、ある人のお祝い会、定年だから当然ながら勤続何十年とかでそれは大変なことだがご本人はいつも通りふざけきった態度で、ちょっといい加減にしてくださいよそんな還暦いまぜんよという突っ込みを常時待ち…

迂回

信号機故障で千代田線が運転見合わせとのことで、夜八時半時点において帰宅路が完全に閉ざされる、が、まずは常磐線にて北千住まで行き、そこから伊勢崎線で別の最寄り駅まで行ける、しかしそこから歩くと自宅まではそこそこ時間は掛かる、が、まあ仕方ない…

外見

今年は法事その他が多く、そのたびに親戚と顔を合わせる機会があった。 それで最近になって鏡で自分の顔を見たり、写真に写った自分の顔を見たり、そういうときに、ああ自分の顔は、あの家の一族だとつくづく思う。というか、ここにいるこいつは、あの一族の…

習慣

おそらく習慣が、自分の心と身体を支え、自分を支える基盤の元になっている。僕の場合はとくにそうだ。たぶん僕は習慣の外側のよるべなさに漂う自由を、謳歌することなどできない。平日の朝に目を覚まして、寒いし眠いし、身体も疲れていて気分最悪であって…

二十

たしか先週から薄手のコートを羽織っていて、このコートは1998年に買ったものでついに二十周年だ。というか、たしか入社した直前だか直後だかに買ったのだから、会社員生活二十周年か、なんか、それはいやだ。このコート、袖は何年か前に一度修理しているが…

昼食

妻は午前中から出掛けたので、今日は夕方まで一人だ。しかし昼前まで寝ていた、こういうのは久しぶりだ、如何にも休日的な惰眠の貪ぼりかただが、熟睡したという感じでもない。外はいい天気。 姪の子に贈る誕生日プレゼントのでかい箱をかかえて宅配便の営業…

辰野登恵子展

北浦和の埼玉県立近代美術館で「辰野登恵子 オン・ペーパーズ A Retrospective 1969-2012」を観る。方眼とかドットをモチーフとしたシルクスクリーンの初期作品がまとめて観られるのは嬉しい。辰野登恵子的な絵画…あのイメージ、形態、色彩と質感というのは…

意味の暴力

姪の子は小学校一年生、学校に通い始めると語彙も増える。テレビや友達同士の会話でさまざまな言葉を知る、言葉を知るということは、その意味にともなう仕草や態度を知るということで、そのような人の立ち振る舞いのありかたを知るということだ。人間の、い…

寄合

人のひしめき合う狭い店内で肩寄せあい背中をぶつけ合いながら酒を飲んでいる。こうやって知らない人たち同士で身を寄せ合っているのが良いのであるらしい、そうなんだろうなあと思う。会計して、人の背中にぶつかるようにして出口へ向かう。受け取って手に…

早起き町

三好銀「いるのにいない日曜日」の収録の「早起き町」がすばらしくて感激した。 午前三時に、アパートの隣の部屋の目覚まし時計が鳴って止まらない。壁の薄いアパートなので眠っていた二人は音で起きてしまう。仕方ないので、朝六時半の散歩に出掛ける。バス…

海辺へ行く道 夏

三好銀「海辺へ行く道 夏」を再読。それはごくふつうの日々だが、今ここやそこで何が起きているのか、誰かが何をしているのか、それで何が変わったり変わらなかったりするのか、それはわかったりわからなかったりする。その景色は遮られているのか開かれてい…

Night And Day

起きているような、眠っているような、物音は全部聴こえている、置時計の振り子が動いている音まで聴いている、しかし眠っている。意識は半分だけ起動されている、スタンバイ状態で止まっている。仕方なくスマホで昔の本を買って退屈しのぎに読み始めて、ま…

祇園囃子

昨日訪れた目黒の自然教育園とか、板橋の赤塚植物園とか、箱根の湿生花園とか、秋冬の時期の枯れ草と枯野の殺風景さを目にすると、なぜか僕はいつも戦国時代とかに城を焼かれて逃げ延びて最期に辿り着いた場所でこと切れる人の最期に見た景色とはあるいはこ…

ひかり、降りそそぐ

目黒の自然教育園に来たのはたぶん十年ぶりくらいじゃないかと思ったけど、調べたら六年前だった。思ったよりも昔だと「時間経つの早い!」と思うし、思ったよりも最近だと「物忘れ激しい!」と思う。どっちにしても年齢のせいにしたがる思考停止感ありの悪…

レンタル

https://natalie.mu/music/column/308017 とても詳細に過去の経緯が書かれていて、ああなつかしいと感慨深くなる。ジャニスは数回しか利用したことがない。自分にとっての「ホーム」は系列店で当時池袋北口から徒歩三分ほどの雑居ビルに入ってたサウンドボッ…

zozo

ZOZOSUITを注文したのが去年の十一月で、品物が到着したのが半年以上経った今年の七月、芸人の全身黒タイツみたいのを着て身体サイズを計測して、その計測値を元にシャツとスーツを数日後に注文したら、品物が届いたのが約半年後の今日となります。もうほと…

女の首を、手の上に乗せて歩いている夢。 コンフィにする巨大な豚のすね肉をノコギリで分断している写真を見て、それがロマン派の絵でユーディットに斬られた首と混ざり合って、手の上で女の首になった。それほど大きくない、たぶん五百グラムくらい、首の断…

山や川や海など自然のうつくしさを高解像度で撮影したNHKのテレビを見ていて、たしかにすごくきれいなんだけど、なんだろうこの妙に浮ついたような、ハイになって戻ってこないような、この抑制をうしなったナルシスティックな自己陶酔感は…と思う。なんとな…

わーー

久々に悪夢を見て、恐怖で「わーー!!」と叫んで目覚めるというヤツをやってしまった。「どうしたの??」と妻があわてるのは最初だけで、ああまたいつものヤツかと悟ると、どんな夢だったのか、何が怖かったのかと何度も尋ねられて、こちらは答えないで無…

図書室

新潮12月号の岸政彦「図書室」を読んだ。最近読んだものだと、山下澄人も柴崎友香も「いかれころ」の三国美千子もそうだが、大阪弁など関西の言葉だけに可能な人々のやり取りのリズム感というのは、強烈にあるなあと思う。作品のベースに大阪のことばが深く…

川口、横浜

川口市立アートギャラリー・アトリアで「樹々あそぶ庭々」浅見貴子作品展〈日々の樹―生々を描く庭〉を観る。最近作から過去作品までバランスよく、大作が並ぶいちばん端奥のスペースは広大で引きも充分にあって素晴らしい展示空間で、とても気持ちよくてなか…

New York

https://twitter.com/akarusa ブログやツイッターをいつも見ているqp氏のニューヨークの写真群がすごすぎる…。MOMAのマティス作品群のすごさと言ったら言葉をうしなう…。美術館って、やはり国力そのものだなと思う。美術作品の写真もすごいけど、夜の雨や朝…

プレステ3

今どきプレイステーション3でグランツーリスモ6を遊ぼうとしている。なぜなのかは自分にもわからない。それにしてもこうしてテレビ画面に向かってコントローラーでメニュー操作するのは、何十年も前のなつかしいことをしている感覚におちいるが、ただしディ…

8トラック

YerBlues、あらためてApple Musicの音源を聴いたら、おそらくそれ用にリマスタリングされているのだと思うが、音質が悪いという感じはしない。むしろクリア過ぎる気がする。 「YerBlues 録音」で検索したらこのサイトが見つかって(https://beatlesdata.info/…

Delay

そういえば今年は、秋花粉の影響をほとんど感じてない。わりとこの季節が毎年の鼻にくる時期のはずだが、今年はとくに変化無しだ。手足の肌は、少しずつカサついてきたかなとは思う。わたくし冬場はスキンミルクが欠かせないのです。しかし今年はまだコート…

Yer Blues

どのように作られた曲なのか、この感触、粒子のざらついた、狭くて窓のない地下のような室内、その中ですべての音が反響し合って互いを打ち消しあっている、ベースの音は痩せているのに篭っていて、アタック音の硬さが目立ち、耳障りな感じで拡散する、ギタ…

Little Person

山野辺太郎「いつか深い穴に落ちるまで」文藝 2018年冬季号 を読んだ。読了してまず感じるのは、どうしようもなさのかなしみというか、あきらめの感傷というか、この私の存在の中心にある空っぽな切なさのようなものだろうか。組織とか社会とか人波の中で、…

川の流れ

待ち合わた友人と我々夫婦の三人で上野の森美術館「フェルメール展」へ。最初の部屋でフランス・ハリスの(あまり大したことない)作品が二点ほどあって、ああ、17Cオランダ画家の絵なんて久しぶりー…とか思っていたのは最初だけで、以降ちょっと絵を観るとい…

僕は宗教とかを信じてないのだが、しかし自分の生が終わったら、ただちに完全に無(というか物質)になるとも思ってなくて、いや、なるのかもしれないけど、しかしその、ほんの一瞬前に、やはり最期一度きりの、退出申請のような、手続き窓口のような場所を通…