2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

再帰性

「保坂和志 小説的思考塾 official #2」をリモート聴講した。以下自分なりに、メモを元にした覚え書き。 読解力は害悪。それは官僚の忖度に似ている、読解するな。そういう力を鍛えるな。 聴きなれない言葉や見慣れない言葉を、辞書のようにおぼえてしまうの…

スリープ

眠りに落ちそうなはずだった、すでに眠っていたのかもしれない。でも落ちきれずに、意識が浮上してきた、また夜の寝室に戻ってきてしまった、そのことに気づいた。横になった身体の諸感覚が戻ってくると同時に、自分の心臓の鼓動が、すこし早く動悸している…

安吾

坂口安吾を読んでいると、意外に、というか、けっこう保坂和志的な感じがする。その思弁性というか、小説の枠組みの中で縦横無尽に言いたいことを混ぜ込んでいく感じ、小説としての体裁が壊れていくことに頓着しない、むしろ積極的にそれらしくない感じを呼…

沈丁花

植物と人間との関係の結び方が、どうしても人間の思うようにはいかず、人間の方から植物に近寄って行ったり、様子を見にいったりしても、植物たちはそれに反応するすべがないし、そもそも最初から人間と同じ土俵上にはいない。いつでも植物がすでに何かを終…

アナキスト

昨日に続いて、柄谷行人「坂口安吾論」読後メモ。 生きよ堕ちよ、どこまでも生きて堕ちきったところにしか救いはない、しかし、ほんとうに堕ちきるところまで行けるかというと、人間はそれほど強くない。生きる以上どうしたって何らかの「カラクリ」を必要と…

ふるさと

柄谷行人「坂口安吾論」を読んだ。 仏教をはじめて美学的な視点で見出したのは岡倉天心だった。岡倉晩年の講義を聴講したこともある和辻哲郎の「古寺巡礼」においては、日本の「古寺」は「美的」なものとして捉えられている。 タウトが発見した「日本の伝統…

今日の料理

むかし、カーター大統領が来日して昭和天皇と対面した場面をニュースを見たことがあったのを、ふいに思い出した。あのとき自分は、天皇陛下という存在をはじめて意識した。それは子供の目から見ても相当にヨボヨボの老人で、少し背の曲がった、白髪に丸眼鏡…

剃刀

志賀直哉の「剃刀」は、僕はこれをおそらく中学生くらいのときに読んだことがある。冒頭を読み始めてすぐにそのことを思い出した。ならば結末はアレだな、、と思った。ところが最後まで読んだら、結末は思っていたのと違っていてけっこう驚いた。こんな凄惨…

たけばし2

会期終了間近ということで、一部展示替えされた「TOPICA PICTUS たけばし」をふたたび観に行く。 水が流れて、その跡が窪み、蛇行しながら海へ近づき、川になった。だとしたら、水が先で川が後か。しかし、水はもともと地面の起伏や窪みに沿って流れていた。…

焚き火

志賀直哉の「焚き火」は、主人公夫婦とその知り合いたちが旅館に滞在中のひとときを描いたもので、ああ、こういう旅行はいいなあとつくづく思う。というよりも、これを読んでいるのがそのままとても快適な旅行体験そのものという感じだ。雨の一日、皆でお菓…

武者

昨日引用した藤枝静男の文中に出てくる志賀直哉は、当時すでに七十歳を越えている。その年齢でも作品制作時にはあれだけメンタルが荒波立つというのが、ほとんど驚異的なことのように思う。 作家が作品をつくる、何の頼りもなく助けもない状況で、蛮勇をふり…

バレたとき

悪事がバレた直後の人間の表情。たとえば横領がバレたとか、不倫がバレたとか、誰かをかくまってるのがバレたとか。そんな瞬間をむかえたときの、当事者の表情。あるいは、ナチス時代のドイツ軍人や、スターリン時代のソビエト官僚が、組織内論理と規定に準…

志賀氏

志賀直哉の「焚き火」「ある一頁」など、たいへんいい。「ある一頁」はとくに、自分がもともと、ブログとか日記で書きたい、文章で実現したい何かって、こういう感じだったかもなあ…と強く思わされた。 志賀作品の多くが、各登場人物たちの強烈な存在感、主…

小人化

昨日の散歩では、自宅から図書館までを、最短コースではなくやや迂回気味に、わりといきあたりばったり、適当な道を選んで歩いていき、そうすると自宅からでも、ふと気付けばあまりなじみのない道に入ってしまったり、そのまま予想外な場所へ出てしまったり…

猫と庄造と二人のをんな

豊田四郎「猫と庄造と二人のをんな」(1956年)の、Youtubeに上がっていたのを観た。こんな感じの女性を、香川京子が演じることがあるのか…。山田五十鈴も成瀬の「流れる」と同年にこれほどタイプの違う女性を演じるのか…。まあ役者なのだから当たり前だろうけ…

イワシとじゃがいものテリーヌ

午前中ジムで少し泳いだあと、最近まるで外食もしてないし、外で酒をのむ機会もないので、今日は久々に、昼から一人酒を解禁とする!となって、表参道まで電車移動。今日が入学試験当日だったのか、制服着た高校生たちがたくさん歩いてる青山学院大学沿いを…

NINIFUNI

真利子哲也「NINIFUNI」(2011年)を観る。冒頭から、国道沿いの景色が延々とつづく。そこで起こる出来事のすべてが、国道沿いという場に呑み込まれていくかのような強烈な閉塞感を感じてしまう。おそらく日本という場所のだいたい七割か八割かくらいが、もし…

低生産性

昨晩は遅くまで打合せしながらモニタに映る文書を編集していた。その日のうちに、報告書をまとめて提出しなければいけなかったのだ。本来なら全体がある程度かたまった時点で内容をチェックして、挙げた修正箇所を適宜反映させればよいのだろうけど、状況的…

殺されたる側

志賀直哉「范の犯罪」という短編。ナイフ投げの曲芸師である夫が、舞台上から投げたナイフが標的の前に立つ妻の頸動脈を切って殺害してしまったという事件について、しかし舞台上の決定的瞬間を見ていた大勢の観客も、夫と妻を知る関係者も、それが故意によ…

反文学論

柄谷行人の「反文学論」を図書館で借りて読んでいたのが先週のことだった。。もう辛辣きわまりないというか、ダメな作品を貶すときの言い方がキツ過ぎでそれが面白くて、「反文学論」は1977年から1978年まで東京新聞に連載された文芸時評で、ちょうどデビュ…

栽培

年末にはじめたルッコラの水栽培だが、一か月強の時間を過ぎて程よく成長したので、ではそろそろ…と夫婦頷き合って、翌日はスーパーでピザ生地に生ハムやオイルサーディンやオリーブなど買ってきて、くだんのルッコラもいよいよ食卓に供することとなった。 …

東京干潟

日本映画専門チャンネルで、村上浩康「東京干潟」(2019年)を観る。多摩川河口の干潟で、蜆を取って暮らすホームレス老人を数年間にわたってとらえたドキュメンタリー。 こういうのを見てしまうと、自己嫌悪をおぼえないわけにはいかない。中途半端さの中にと…

関西ことば

【ONLINE EVENT】『大阪』刊行記念対談「街の人生に耳を澄ます」岸政彦×柴崎友香の配信を見た。たいへん面白い。笑った。とにかく誰かが大阪弁で喋ってるだけで面白いと感じてしまうのが自分だ。関西ことばのやり取りそのものを聞くのが昔から好きだったけど…

With A little help From My Friends

シャッフル再生で突然、ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンドが聴こえてきて、ビートルズのアウトテイクかと思ったら、ビーチ・ボーイズによるカバーだった。「1967 - Sunshine Tomorrow」というアウトテイクや未発表音源などを集めたアルバ…

揉め事

電車の中で、おじさん二人が、足を踏んだ踏まないで、盛大に言い合いしていた。あやまれよ、なんでだよ、あやまらねえよ、と、水掛け論がとめどもなく続いている。犬も食わないような、ああした口喧嘩は、どれだけ年齢を重ねた立派な大人であっても、一度は…

落ちぶれた

しかし彼は今や、生きる気力をうしない、ただ酒におぼれ、自堕落なその日暮らしをつづけていた。…みたいな、そんな文章があったとして、それを読んだならば、はあ、そうかなるほど、そんな風に生きている人なんだね、そういう感じね、と思うだろう。けど、よ…

緊急事態宣言が延長されたので、都内の公園や施設の休園期間も延長。小石川後楽園も向島百花園も六義園も、清澄庭園も浜離宮も、見事にぜんぶ閉まっている。これが三月までだから、今年の梅は、ここらの庭園では見ることができない。まあ毎年律儀にどこかで…

飛沫

感染予防対策を、常に心がけなければいけなくなって、世間がそんな雰囲気になってきたのが、ちょうど一年前くらいか。まだしばらくのあいだはこれが続くわけだが、きっといつかは、新型コロナウィルスの脅威も収束するのだとして、しかしこれ以降、人と人が…