気温

朝、寝室に冷房が効いているのは、夜中に暑さで目覚めた妻か僕のどちらかが、エアコンを起動させるからだ。それは明け方になるとしばしば部屋を冷やし過ぎてしまい、僕は無意識のうちに薄いタオルケットをしっかりとくるまっていたことに、目を覚ましてから気付いたりもする。眠りながら、寒い、危険だ、風邪をひくかもしれない…と、眠りと目覚めの間で考えていることもある。しかし今朝、目覚めて見上げるとエアコンは停止していた。先に起きた妻があらかじめ停止させたわけでもなさそうだ。なぜなら隣の部屋のエアコンも稼働していなかったし、それでも室内が、昨日までとは違って、きっちりと室温調整したかのように、ひんやりと冷たく引き締まっていたからだ。その後、玄関を出て駅まで徒歩で向かうときの、外の空気が肌にあたる感じも、やはりさっきと同じ質感だった。毎年この時期に特有の、昨日までと今日とを冷酷なまでに潔くはっきりと区切る、いつものやり方がなされたのだ、この感じにはおぼえがある。一年に一度、かならず記憶から呼び起こされる。