2007-01-01から1年間の記事一覧

「ピピロッティ リスト:からから」展

表題の展覧会を観に原美術館へ。EVER Is Over All と題されたビデオ作品では、水色のワンピースを着た女性が花の雌しべのような形をした棒をもって、路上に止まっている車の側面のガラスを次々と割っていきながら楽しげに歩く、その一連の有様がスローモーシ…

「青の稲妻」

DVDにて。妙なオペラを絶唱している男の居る薄暗い部屋から繋がっている荒んだ雰囲気のビリヤード場でタバコの煙をくゆらせ、次の場面ではダンサーに扮したチャオ・タオが観衆と嬌声に満ちた簡易ステージで何とも胡散臭い紹介と共に異様なまでにチープな…

「呉清源 極みの棋譜」

シネスイッチ銀座にて鑑賞。冒頭、対局会場の場まで庭に面した廊下を歩くときの、足袋履きの足が廊下の木を踏みしめていくときの足音が素晴らしい。男性一人の体重分が乗っかって、それが縁の下にまで響いて空気全体を微かに振るわせる。それが歩く毎にどん…

「三月の5日間」チェルフィッチュ

チェルフィッチュ『三月の5日間』 この前観に行った「六本木クロッシング」では「チェルフィッチュ」も展示(紹介?)されており、それ用に編集された映像が放映されていたので僕はそこではじめて「チェルフィッチュ」を観た。会場にはDVDも売っていたので…

「砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード」

かつて自分を死の淵にまで追いやった二人組を罠にはめ、遂に念願の復讐の時が訪れたとき、こいつは相変わらず人を撃てないだろうとタカを括って油断したひとりが予想に反しケーブル・ホーグの銃によって撃ち殺されてしまうと、もう片方の男は死の恐怖に恐れ…

初冬の朝

階段を上りプラットホームに立つと、毎朝必ず、左右どちらかに電車が止まっているので、どちらでもいいから乗り込んでドアの脇に立つ。さっき階段を上ったときの勢いがしばらくたってもなかなか抜けず、妙に体が火照っており呼吸が軽く乱れたままで胸の動悸…

「小早川家の秋」

「滅びゆく旧き物」の感じ、「時代は変わる」みたいな意味を感じさせようという意志が、いつもの小津作品よりやや強めに感じられる気がする。息の詰まるような重めかしい雰囲気。小早川家の造り酒屋の雰囲気とか家族の雰囲気が…という事じゃなくて、映画全体…

「紅葉〜六本木〜ホークス」

数日前から紅葉が本格的になってきたようで、全体のところどころが色づいている感じの木々が多い訳だが、しかしその色づきが如何にも唐突というのか「紅葉」と聞いて人間が喜ぶ按配を良くご存知なのでは?と疑われるような感じで、まあとにかく大変キレイな…

「ふたつの時、ふたりの時間」

[rakuten:guruguru2:10286366:image] ツァイ・ミンリャンという作家が作る映画は、たとえばわかりやすい一定の趣味に彩られている訳でもないし、箱庭的な御伽噺でもない。天国的な空気に満ちている訳でもないし、作家個人の拘泥や執念の具現化でもない。とい…

「女が階段を上る時」

CSで放映されたので再見。そうだっけこういう映画だったけ…と思い、初見時の印象に違和感を覚えなくもないのだが、いやもちろん素晴らしい作品である事は疑いようがないのだが、しかしこんなコテコテの水商売モノで、ギトギトした気持ち悪い中年と商売女し…

「処刑の部屋」

若いときの川口浩の姿をぼーっと見ているだけで幸せになれる、というくらいの勢いがないと付いていけない。観続けながら薄っすらと漂う不愉快さを耐えるしかないような感じ。 上半身裸で足を大股に開いて仁王立ちになって若尾文子に対峙するときのポーズや、…

「どこまでも見る」

ダンサー・イン・ザ・ダークという映画の中で、視力を完全に失いつつある主人公が、そんな自分の運命を受け入れつつ肯定して「私はもう見るべきものはすべて見た」と語るシーンがあった。…僕なんかは大したものを全然見ていないし、仮にそのような悲劇が襲い…

「迷子」

均質的な郊外のだだっ広い公園と、所々に点在する工事現場の仮囲いに土砂に資材置き場。家族連れやペットを連れて散歩する人や子供たち。。あるいは雑居ビルのフロア内に薄暗い色温度(寒)な蛍光灯の下照らし出されたCRTモニタの並び。インターネットカフ…

ムンク展(国立西洋美術館)

僕にとって去年くらいからずっと初期ボナールとかヴィヤールとかのナビ派のもつ独特な感じが気になっていて、要するにかたちの決め方みたいなところで自分なりに結構重要な問題みたいになっていた。もともとロートレックやドガやドーミエの線描を見ているの…

「宗方姉妹」

DVDにて。観たのはたぶん二度目だが改めて素晴らしいと思った。もう、比較を絶してすごいと思う。大人たちが、それぞれの大人の事情を生きていて、それらを各人なりにまっとうする。高峰秀子のジタバタを通して、大人の面倒な事情の大変さ。厄介さ。鼻で…

「好男好女」

DVDにて。まあ結構難しいというか、何とも言えない余韻を残す映画であるが、しかし強い「作為の意志」に満ち溢れていて、その戦略がバチッと決まっていてカッコいいのは良く判る。「百年恋歌」の構造と良く似ていて、おそらく「百年恋歌」が本作のある種…

小さなドル箱

ヴェンダースの「東京画」を観ていたら、日本のパチンコ屋が出てくるのだが、この頃(1983年)のパチンコを一度で良いから体験したかったと思った。今のパチンコ屋はあまりにもキレイすぎて煩すぎて各業者の思惑が鬱陶し過ぎて全く興味をもてない。「産業…

お好みの恐怖

僕という人間は実際、ほとんどこの世にいないも同然だとして、そんな芥子粒ほどの僕が認識できるこの世界は断片の集積であって、単なる偶然のあらわれの連続である。今までずっと、向けた視線の先や物音のする方角の感じをたまたま記憶していて、それらの何…

成瀬の30年代と40年代

(女優と詩人) CSで特集している戦前〜戦中の成瀬映画のうち数本を観ただけだが、30年代の諸作品にとりあえず感じるのは、登場人物に気ままで自由な身分の人々が多いということだ。。女は大抵、女優だったり流しの芸人だったりと華やかだが不安定な浮世稼…

最近のPlayListから…

The BandのBessie Smithとか、The WhoのLive At LeedsのSubstituteとか、The KinksのSet Me Freeとか、最近はこのあたりにグッと来てるのだが、これらの曲に共通性はほとんどないけど、強いてあげれば、あんまり上手くもないけどそこそこキレイな男性コーラ…

保坂和志講演会(feat.古谷利裕) 中央大学多摩キャンパス8号館8304教室

表題の講演会を聞きに中央大学まで。ものすごく遠い。かつ大学に近づくにつれて、学園祭の賑わいの雰囲気がものすごくてクラクラする。同時に、自分がこういう雰囲気から年月を経ていかに遠くまで来てしまったのか?という事も、すごく切実に感じた。もう皆…

ハングアップ(hang-up)

「インランド・エンパイア」せっかくだから映画館でやってる内に観ておこうと思い恵比寿ガーデンシネマまで行った。小雨のぱらつく薄暗い午後。映画館に着いてチケットを購入するときにはじめて今日が映画の日だと気付いた。 この映画がおおよそどういうもの…

「夫婦」

CSで先週の金曜日に録画しておいたものを、やっと先程観る事ができた。「夫婦」は初めて観る1953年作品。久々の成瀬作品鑑賞である。始まって5分もしたらもう「おぉーー」と深く声に出して唸ってしまうくらい「良い」感じが横溢しているので、それだ…

日記(Nikki)

学生のときに美術を学んで、その後も絵を描くという事から完全には離れられず今日までやってきましたが、20代後半で美術とは無縁な企業に就職もしましたし、その後結婚もしまして、現在も会社員でありながら、まだ絵も描いていて、そういう生活でもう36…

青空

それにしても昨日の天気の良さは異様なほどであった。世間一般ではあの天候を評して一言で簡単に、秋晴れ、という言葉をもってあらわし、それで涼しい顔をしていられるのであろうが、そのような言葉ではちょっと勿体無いほどの素晴らしい天気であった。何し…

「エドワード・ヤンの恋愛時代」

asin:B00005H1H7 VHSにて。本作を再生し始めてすぐ、ああ何年か前にも一度観てるなぁと思い出したのだが、物語の内容は全くおぼえてなかった。で、冒頭から容赦なく押し寄せてくる圧倒的に素晴らしい展開のスピードに驚き、あぁこんな映画だったっけ?と…

「東京から考える」

先ほど読了。面白かったので自分としては珍しく結構一気に読んだ。埼玉の、国道16号線を行き来する車が窓から見える家に育ち、現在は足立区に住んでいる自分にとっては極めて「近い」感じがする本であった。というか自分はまさに「郊外」の人で、この本で…

世界/鑑賞/映画/旅行

旅行ってのはいいものだ。…旅行の良いところは、旅先というのが自分の中の夢や幻想ではなくて実在するという事だ。それは自分の想像力の外側が実在するという事なのだ。 しかしいつもそうなのだが、旅行から帰って来て玄関の鍵を開けて自室に入り、旅行鞄の…

「世界」

DVDにて。なかなか難しい映画だという印象…とっかかるところがとても少なく感じられる。決して退屈でもつまらないという訳でもないのだが、何とも捉えがたいし、今何を書けば良いのかもよくわからない。とりあえず探り探り書いている次第。 世界公園とい…

「東京オリンピック」

DVDにて。うーん。これは破格にすごい。面白いし、素晴らしい。市川崑の作品としか云いようの無い出来だろうと思う。対象を掴み、把握し、極めて強烈な作為をもって料理する確信に満ちた手つきがすごい。ジャ・ジャンクーの「三峡」か?と思うほどの瓦礫…