シイラという魚を知ってる人は、それほど多くないかもしれない。そのへんの魚屋では見かけないと思う。父親の実家の港町では、その白身の淡泊な身を塩干しにして食していた。ぼくのシイラの記憶はもっぱら子供の当時、実家に帰省したときのものだ。

塩干しのシイラは、とにかく塩辛いのだ。そのまま食べるのがためらわれるほどの塩味で、ではどのように食べるかというと、ごはんの上にその身をほぐして乗せてお茶をかける。お茶漬けにして食べるのだ。

最近それをしばしば思い出し、これ以上ないほどシンプルな、あのお茶漬けをもう一度食べたいと考えていたのもあり、よしと決断してネットで通信販売を調べたら、取り扱うお店がすぐ見つかった。安価な商品価格とその三倍を越える送料にやや怯むも、まあいいでしょうと勢いにまかせて注文した。それが今日届いた。

こうして何十年ぶりに味わうシイラの干物であったが、一口食べて、失望した。ああやっぱりと思った。まるでふつうだった。食べやすくて、やや歯ごたえのあるカマスを彷彿とさせた。

じつは、おおむねそんなものではないか、との予想はついていた。ふつうに一般販売する干物を、あれほど塩辛く作るわけがない。あれは誰にでも売っていいものではない。そもそも、かつてのあれは、地元民だけが食べるものではなかったのではないか。あんな乱暴な味わいの食物が、ネットで買えるわけはないということか。